建築用に使われる大型サイズの角形鋼管は、「コラム」と呼ばれています。ナカジマ鋼管が1978年に業界初となる大径角形鋼管の量産化に成功して以来、鉄骨造の柱材として主流を担っています。中規模・大規模な建築物の柱として使われ、規格や製造方法によっていくつかの種類に分けられます。
建築用コラムの製造所(ナカジマ鋼管 天龍川製造所)
ロール成形で製造される、JIS規格の一般構造用角形鋼管です。STKR400とSTKR490があり、STKRは「S=Steel T=tube K=構 R=Rectangular」の略といわれ、数字は引張強さの下限値を指しています。
どちらも日本鉄鋼連盟が製品規定する建築構造用冷間成形角形鋼管です。BCRは、Box Column(ボックスコラム/角形鋼管)の「BC」と、ロール成形を表わす「R」を、BCPはプレス成形を表わす「P」を組み合わせたもの。BCR295やBCP325など記載の数値は、降伏点の下限値を示しています。
ナカジマ鋼管では熱間成形加工によって耐震性を高めた熱間成形角形鋼管「スーパーホットコラム(SHC)」を製造し、国土交通大臣の指定建築材料の認定を受け、科学技術庁長官賞も受賞。ヨーロッパの基準適合マークであるCEマークも取得しています。SHC400などの数値は引張強さの下限値を指しています。
ナカジマ鋼管の熱間成形角形鋼管「スーパーホットコラム(SHC)」
STKRは1970年代に登場し、1994年にBCR・BCPが規格化されるまで鉄骨造建築物の柱材の主流を担い、現在は主に小規模な建築物で使われています。その経緯(建築用コラムの歴史)は本記事の最後にご紹介しています。
BCR(冷間ロール成形角形鋼管)は、主に中小規模鉄骨造建築物や大規模鉄骨造建築物で使用され、より大型なサイズにも対応するBCP(冷間プレス成形角形鋼管)は大規模鉄骨造建築物で使われています。
BCR・BCPの特長は、STKRよりも化学成分の規定項目が多く、地震に強い柱材であること。溶接性能や靭性がSN材と同等に確保され、BCR材・BCP材はSTKR材よりも大きな変形性能を発揮します。特に、BCPの辺部は冷間加工を受けていないため、母材とほぼ同等で、機械的性質についてSN材と同一です。
ロール成形もしくはプレス成形の後に熱間成形加工を施し、鉄本来の粘り強さを持たせることで高い耐震性を発揮する建築構造用熱間成形角形鋼管です。1995年1月に発生した阪神・淡路大震災を機に、ナカジマ鋼管が冷間成形角形鋼管よりもさらに高品質な建築構造用鋼管の普及をめざして開発。1995年4月に、英国のBritish Steel社(現Tata Steel社)から熱間成形加工の技術協力を受け、当社独自技術によるオリジナルの熱間成形角形鋼管「スーパーホットコラム」の量産化に成功しました。
ナカジマ鋼管のロール成形
寸法は□250〜550mm、板厚は9〜22mmまで。BCRは生産性やコストに優れ、短納期などのニーズにも対応しています。□250×9より大きなサイズは、STKR400よりもBCR295のほうがコスト・納期においてメリットが生じやすくなります。
寸法は□400〜1000mm、板厚は16〜50mmまでの大型サイズに対応しています。さらに、冷間成形角形鋼管に課せられた設計制限を外すことができる高靱性コラム「NBCP325EX」や、板厚50mmまで対応する高強度550N/mm²級の高性能冷間プレス成形角形鋼管「Nカラム NBCP385B/C」などもあります。
寸法は□250〜800mm、板厚は9〜70mmまでの大型サイズにも対応。板厚が40mmを超えても基準強度(F値)が低下しないスーパーホットコラム(SHCK)を2003年より製造しています。SHCは、冷間成形角形鋼管の設計・施工マニュアルに従うことなく設計でき、高品質な建物を経済的に設計することができます。
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ナカジマ鋼管のプレス成形
同一のサイズもしくは耐力・降伏点の場合、上位互換規格を選択するとさまざまなメリットが生まれることもあります。
STKR400とBCR295の場合、BCR295が上位互換規格となります。STKRよりも高品質なBCRは、SN材に相当する建築構造用として規格化された国土交通大臣の認定品です。BCR295は、STKR400を使用するのに比べて、ルート3(保有水平耐力計算)の設計を用いることで、建物の鉄骨重量を減らすことが可能です。
BCR・BCPに対してSHCが上位互換規格に。たとえば、BCP325とSHCは耐力及び降伏点が同値のため、置き換えが比較的容易です。10mを超えるスパンを有する中高層のビルにおいて、スーパーホットコラム(SHC)を使用すれば、柱断面が小さくなり柱重量・溶接量を低減。さらに耐火被覆面積・仕上げ面積を削減でき、建築デザイン上のメリットが得られ、効率的なコストダウンも図ることができます。
ナカジマ鋼管製品の導入事例(国立競技場)
かつて、鉄骨ラーメン構造の柱材は「日の字H」が主流でした。1970年代後半には中小鉄骨を対象にしたロールコラムが登場し、普及が進みます。これがSTKRです。ナカジマ鋼管では、1976年に大径角形鋼管の製造方法・装置について国産新技術の認定を取得。さらに1984年には、世界最大級の電縫鋼管製造設備を設置し、ロール成形による量産体制を確立しました。
1981年に改正された建築基準法(新耐震設計法)で、部材の耐力を発揮させるには細部にわたる靭性(粘り強さ)の確保を規定。そのため、平坦部も塑性加工の影響を受けるロールコラム(STKR)よりも、さらに高品質な規格の製品が求められるようになりました。これを受け、1994年に(社)鋼材倶楽部(現:日本鉄鋼連盟)がBCR295、BCP235、BCP325を制定し、STKRよりも高性能な冷間成形角形鋼管として規格化。
ナカジマ鋼管でも、BCR295、BCP235、BCP325を製造し、1995年にはより耐震性の高い熱間成形角形鋼管「スーパーホットコラム(SHC)」の量産を開始。建築構造用鋼管のエンジニアリングカンパニーとして、今後も、より高品質な鋼管の開発・製造に挑み続けていきます。