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5分でわかる!構造計算の「ルート」「適合性判定」を簡潔に解説。 工期や経済性に関わるルートと柱材の関係も紹介

2022.03.31

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構造計算の「ルート」とは

安全を守るための計算ルート

「構造計算」とは、建築構造物を建てるにあたって、建物自体の重さや荷重などを計算し、地球の重力はもちろん、地震や台風などにも耐えられるかどうかを計算すること。そして、「ルート」とはその計算方法(ルール)を指します。通常、計算は専用のソフトウェアを用いて行われます。

構造計算のルートは建築基準法で定められ、その内容などを建築主事または指定確認検査機関に提出し、建築基準法等の基準に適合しているか確認を受ける必要があります。これが「建築確認」と呼ばれるものです。

ルートは大きく3種類

計算方法は、以下のようにルート1・2・3の3種類あります。

・ルート1:許容応力度設計
建築構造物自体の重さや建物内の人や物の重さが重力に耐えられるか、地震・台風による力にも耐えられるのかを計算。中規模建築構造物(例:鉄骨造2階以上)を対象としている。

・ルート2:許容応力度等計算
ルート1の計算を満足しつつ、建築構造物のバランスや接合部の破断防止、部材の局部座屈防止などを計算。大規模建築構造物(例:鉄骨造4階以上)で用いられる。

・ルート3:保有水平耐力計算
建築構造物が地震で崩壊せず粘り強く耐えられるかを計算。大規模建築構造物(例:鉄骨造4階以上)で用いられる。

※中規模建築構造物でも任意でルート2・3を選択することができる。

ルートごとの違いは?

ルート1→2→3の順で計算が複雑になっていきます。イメージとしては、ルート1では「中規模の地震で損傷しなければいい」という比較的、単純な考え方をもとにしていますが、ルート3になると「万一、大地震が起きて建物が壊れても、崩壊せずに中にいる人命を守れるか」といったところまで計算する必要があります。また、ルート3は適合性判定を受けなければいけません。

構造計算「適合性判定」とは

構造計算書偽造問題を契機に策定

適合性判定は、2005年に発覚した構造計算書偽造問題をきっかけに定められた制度です。2006年の建築基準法改正によって、高度な構造計算が必要となる高さ20m超の鉄筋コンクリート造の建築構造物などは、都道府県知事または指定構造計算適合性判定機関による構造計算適合性判定が義務付けられています。

適合性判定の対象

適合性判定の対象となる構造計算は、ルート3と限界耐力計算を用いたケースです。もともとルート2も対象でしたが、2015年6月より一定の条件を満たすことで対象外に。実質的にルート2は適合性判定が不要となりました。

適合性判定の影響

適合性判定に係る確認審査の平均は50〜60日※。計算ルートを任意で選択する場合、ルート3では確認審査期間を工期のなかに考慮する必要があります。たとえば、工期が1年以内の中規模建築構造物では、2カ月ほどの確認審査期間がコスト面で影響を与える可能性があります。逆にルート2で計算することで工期に係るコストを抑えることができます。

構造計算 ルートと柱材の関係

ルートで経済性が変わる

ルート3は適合性判定の確認審査期間が必要になると紹介しましたが、決してデメリットばかりではありません。ルート3で計算することで、使用する鉄骨の重量を減らすことができ、鉄骨の重量が減れば、建設に係るコストを抑えることにつながります。

ルート2における柱材のハンディ

ルートと柱材の関係でぜひ知っておきたいことがあります。ルート2で、柱材にBCRやBCPと呼ばれる「冷間成形角形鋼管」を用いると柱梁耐力比で1.5倍の耐力が求められ、柱のサイズを大きくする必要があります。つまり、柱材のコスト増につながります。

そこで、ルート3を用いることが考えられます。ルート3では柱梁耐力比のハンディが不要となり、柱のサイズを大きくする必要はありません。ただし、適合性判定の確認審査期間が必要となり、工期に影響を及ぼします。

これらの解決策としてナカジマ鋼管では、冷間成形角形鋼管「BCR」「BCP」より高品質な「スーパーホットコラム(SHC)」と呼ばれる熱間成形角形鋼管の使用をご提案しています。

構造計算上で利点のある柱材

ルート2において設計制限がないSHC

SHCは、ルート2において設計制限がないことが大きなメリットです。冷間成形角形鋼管で課せられる柱梁耐力比などのハンディがなく、冷間成形角形鋼管と比べると柱のサイズを小さくすることができます。柱のサイズが小さくなれば、重量が減り、柱材にかかるコストを下げやすくなります。

また、SHCを使い、ルート2を用いることで、柱材のコストを抑えながら適合性判定の確認審査期間を省くこともでき、ルート3と比較して工期を短縮できます。

▶冷間成形角形鋼管と熱間成形角形鋼管の設計制限比較はこちら

柱材の互換性がポイント

このほかにも、冷間成形角形鋼管から熱間成形角形鋼管に置き換えることでメリットが生まれるケースがあります。たとえば、BCP325をSHC355に置き換えると耐力が約1割増え、サイズを小さくすることができます。柱の角もBCP325と比べてSHC355は角部の曲率半径が小さいため断面性能が高く、設計面でのメリットを生み出せます。

ナカジマ鋼管では、コスト面や設計面において、より優位な設計が実現できるよう、柱材の互換性をふまえたコーディネートをご提案することができます。

▶角部形状と断面性能の詳細はこちら

ルートとあわせて検討したいSHCとは

ナカジマ鋼管は、400角を超える大径熱間成形角形鋼管を量産する国内唯一のメーカーです。SHCは、冷間成形角形鋼管の設計・施工マニュアルに従うことなく設計でき、BCR・BCPと比べて高品質な建物を経済的に設計することが可能になります。

※適合性判定に係る確認審査の平均日数は国土交通省の資料を参考としています。
▶参考資料はこちら

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