角形鋼管の断面性能は、荷重など上からかかる力に柱がどれだけ耐えられるか、曲げに対する力によって柱がどれだけたわんだり、衝撃に耐えられるかを計るもの。大きく断面積・断面二次モーメント・断面係数に分けることができます。それぞれの数値は、コラム(大径角形鋼管)の規格やサイズによって異なり、製品パンフレットなどで確認することができます。
断面積は柱材の強さに比例します。柱材の場合、柱の圧縮応力度の計算で用いられ、基本的に面積が大きいほど、荷重など上からかかる圧縮力に耐えることができるといえます。
柱にかかる圧縮力によって、たわみ(座屈)の起きにくさを計るもの。数値が高いほどたわみが起きにくくなります。つまり変形に対する強さを示すもので、断面形状が決まれば、サイズに比例します。
上からかかる圧縮力によって、柱が壊れずにどれだけ耐えられるかを計るもの。数値が高いほど、圧縮力に対する強度が高くなります。つまり壊れにくさを示すもので、断面二次モーメントと似ているようですが意味は異なります。
柱材として使われる大径角形鋼管は、コラムと呼ばれるだけあって断面は一見、正方形に見えますが、角をよく見ると丸くなっています。この角部外側の曲率半径(R)によって断面性能が変わります。Rの数値が低い=角部形状がピンっと角ばった形だと、同じ辺長・板厚でも断面積が増え、断面性能は高くなるのです。
規格によって以下の通り、Rが変わります。数字は規格ごとに設定された曲率半径規格値で、Tは板厚を指します。
BCP235:R=3.5T
BCP325:R=3.5T
BCR295:R=2.5T
SHC400:R=2.0T
SHC355:R=1.5T
たとえば、板厚が12mmのSHC355は、Rが18となります。
Rが規格によって異なるのは、製造方法が大きく関係しています。
BCPは冷間プレス成形角形鋼管の規格名。鋼板を常温でプレス成形するため、曲率半径が小さい角張った形状にすると角部内部が割れてしまうため、角部は丸みを帯びた形状になり、曲率半径は大きくなります。
BCPの製造工程
BCRは冷間ロール成形角形鋼管の規格名。コイルと呼ばれる鋼材をロール成形で製造。先に丸管を製造してから角管に成形を行うもので、段階的に曲げ加工を行うため、BCPと比べると角部にかかる負荷が軽減され、曲率半径が小さいコラムを製造できます。
BCRの製造工程
SHCは、ナカジマ鋼管オリジナルの熱間成形角形鋼管「スーパーホットコラム」の略です。加熱した状態で角部を成形するため、BCPやBCRと比べて角部を角張らせることができ、曲率半径を小さくできます。
SHCの製造工程
また、SHCは熱間成形によって加工硬化が起こらず、下図のように鋼管全断面の硬さ・結晶構造が均一に。角部の残留応力も除去され、高い座屈強度を備えています。
曲率半径が小さいコラムは、断面積が大きく断面性能が高いため、場合によっては柱のサイズを小さくすることができます。
コストの抑制につながるほか、設計面においてもスペースの有効活用が図れます。また、角部が角ばり正方形に近いと収まりがよい点も設計上のメリットとなります。
断面性能を高めるには、柱の断面積を大きくするのが手っ取り早い方法ですが、サイズが大きくなれば、鉄骨の重量が増え、コスト増につながります。また、柱が大きくなることで設計上の制約が生まれる懸念も。
そこで、前述の曲率半径が小さいSHCを用いると、サイズや板厚を変えることなく、断面性能を高めることができ、鉄骨の重量を抑えることでコストの抑制も防ぎ、なにより設計上の自由度も維持・向上できます。また、曲率半径が小さいコラムは梁のサイズを大きくでき、スパンを広くすることにもつながります。