ナカジマ鋼管は、冷間成形角形鋼管(STKR・BCR・BCP)に加え、熱間成形角形鋼管「スーパーホットコラム(SHC)」を製造する国内唯一のメーカーです。熱間成形角形鋼管は、加熱した状態で成形することで鉄本来の粘り強さを持たせ、高い耐震性を発揮。国土交通大臣の指定建築材料の認定を受け、ヨーロッパの基準適合マークであるCEマークも取得しています。
鉄骨造の柱材として主流となっていた冷間成形角形鋼管よりも、さらに地震に強い柱材が必要ではないか。1990年代に入り、建築構造学の権威である加藤勉・東京大学名誉教授からの助言もいただきながら、ナカジマ鋼管では欧米で主流の熱間成形角形鋼管に着目。さらに、1995年に発生した「阪神・淡路大震災(M7.3)」を目の当たりにし、より耐震性の高い建築構造用鋼管の必要性が喫緊の課題と実感し、熱間成形角形鋼管の量産化・普及をめざしたのです。
ナカジマ鋼管オリジナルの熱間成形角形鋼管「スーパーホットコラム(SHC)」
業界初となる大径角形鋼管の量産化に成功するなど、ナカジマ鋼管では長年にわたって造管技術を磨いてきました。これらのノウハウをもとに、英国の国営製鉄所「British Steel社(現Tata Steel社)」から熱間成形による造管技術の協力を得て、大径の熱間成形角形鋼管を製造する独自の技術を新たに開発。大規模な設備投資を行い、1995年4月に当社独自技術による熱間成形製造ラインを天龍川製造所に完成させ、「スーパーホットコラム(SHC)」の量産を開始しました。最適な操業条件がコンピューターによって集中制御でき、厳格な品質管理の自動化も可能にする最新鋭の製造ラインは、世界最大級の熱間成形角形鋼管の製造も可能となっています。
British Steel社からの技術協力を示す盾皿
ナカジマ鋼管は、□400mmを超える大径の熱間成形角形鋼管を製造する日本国内唯一のメーカー(国土交通省 指定建築材料 構造用鋼材より)。量産化だけでなく大型サイズへの対応も考慮し、1996年には御前崎製造所に新たな造管設備を導入。大径かつ極厚の熱間成形角形鋼管の製造体制も確立しています。現在、辺長800mm×800mm、板厚70mmの大型サイズまで対応し、国内だけでなく欧米での特許も数多く取得。国際市場でも品質面において高く評価されています。
SHCの製造工程
SHCは、加熱した状態で成形することで加工硬化が起こらず、下図のように鋼管全断面の硬さ・結晶構造が均一になります。そのため、鉄本来の粘り強さと高い強度を持つ理想的な建築鋼材といえます。塑性変形能力に富んだ靭性、残留応力が除去され、高い座屈強度を持ち、溶接性も優れています。
冷間成形角形鋼管の設計・施工マニュアルに従うことなく設計でき、高品質な建物を経済的に設計することが可能になります。設計上のハンディがなく、柱の応力割増しあるいは耐力低減による設計を行う必要がありません。また、構造計算が容易で、確認申請がスムーズ。ルート1・2で構造計算することで経済的かつスピーディな設計が可能です。
SHCは、SN材相当のSHC400、490(数値は引張強さの下限値)、さらに高い耐力を求めたEN材相当のSHC275、355の4種類をラインナップ。さらに、2003年にはスーパーホットコラム(SHCK)を技術開発し、販売を開始。SHCK490B/Cの材質は、JIS G 3136 SN490B/Cに適合した化学成分と、板厚40mmを超えても基準強度が低下しない機械的性質が特長です。極厚鋼板を使用した4面ボックス柱と比べ、溶接による品質のばらつきや残留応力がなく、母材にSN490級鋼を用いた高品質で低コストな柱材となっています。
ナカジマ鋼管は、2009年にSHCの優れた製品特性を生かしたノンダイアフラム構法を開発。一般的な柱梁結合部のダイアフラム構法の問題点を解消した画期的な構法です。柱梁結合部にダイアフラムを設けないことで、溶接箇所を大幅に削減でき、加工・製作・検査工程を低減し、鉄骨造の品質が向上。さらに、建築構造学の権威である東京大学・桑村仁名誉教授との共同研究の成果として、2018年に円形鋼管柱を用いたノンダイアフラム構法を開発するなど、エンジニアリングカンパニーとして耐震性を高める鋼管と構法の研究・開発に全力を注いでいます。
ナカジマ鋼管が開発したノンダイアフラム構法